ジャパニーズ和牛ワールドオークションについての一コマ。

和牛サーロインステーキ3種類の食べ比べと共に、会場内で出汁シャブが供される
事となった。そこで、以前から親交のある大阪の老舗出汁屋さんに連絡。
神戸ビーフのクラシタを使い、出汁シャブにして提供する計画をお話しすると、
くだんの彼は快諾して下さり、配合をしてくれるとの事。
シャブシャブの出汁は準備出来たので、次はその風味。
ワールドオークション会議中に、あるお偉い方が
「海外の方は日本の柑橘類にとても興味を持っている。」
「出汁ポン酢で食べてもらおう。」
と発信。海外事業部の方もそれに呼応し、かくして
”神戸ビーフポン酢出汁シャブ”
での提供が決定された。
出汁の目途はプロにお任せしていたので、次はポン酢か・・・
と考えていた時に、ふといつもの山で自生している、柚子を思い出した。
「あの柚子、使えんのかな?」
ポン酢とは違うのだが、天然(?)の柚子を使うのも、面白そうだ。
但し、品質の解らない状態で使うには不安が残る。
そこで知り合いのイタリア料理レストランを営む、オーナーシェフに
使ってもらい、その品質を判断する事とした。
ただ単に、
「柚子使ってよ!」
では味気ないので、山の原木椎茸を彼にプレゼントし、
それをダシにゆずの話を進める。
「あー、天然なんすね!昔、レモンをそういうやつ使った事があるんですが、
その時は死ぬほど酸っぱかったっす!」
という、自生=酸味最凶説
を教えてもらい、一抹の不安を抱きながらも柚子を託した。
無論、自分でも確認しようと収穫した柚子を自宅で試食。
まずは皮から。
うん、風味抜群。
たまらなく香ばしい香りは、食欲をそそる。
皮の品質は問題なし。
では、果汁はどうか。
果汁の確認は明日にやろうとしたのだが、次の日の料理に
柚子の出番がなく、もったいないのでお風呂に入れてみる事に。
柚子を湯船に投入。
良い香りだ。
なんと贅沢な。
香りも楽しんだし、果汁も絞ってみるか。
親指でググっと力を入れると、皮に亀裂が走り
果汁が飛び出てきた。
うん、良い香り。
うん?
なにか、チクチクする。
あれ、肌に刺激が
あ!痛い!
たった1つの柚子で、信じられないぐらいいい香りのしていた
お風呂。しかし、その果汁はたった1つで数百リットルある湯船の
水を、刺激性のある水に変えてしまったのだ。
恐るべし、天然。
風呂から上がり、果汁を確認した私の顔は、これまでにないぐらい
眉間にしわが寄っていたに違いない。
まあ、美味いんだけど。
先述のシェフからも、
「すっげー酸っぱさでしたが、めちゃ美味かったですよ!」
という体験済みの報告を頂き、いよいよ自信を持って提供する事に。
あの出汁ポン酢は、まさか私の肌でも品質を確認していたとは、
ジャパニーズ和牛ワールドオークションに参加していた誰しも思うまい。
因みに果汁の添加は、もちろんしっかり加減して使ったので
プロ出汁の素と合わさり最高の出来栄えとなった。
皮は丸ごと1個分、ディレクション会社のよし君が細くスライスして添加。
提供の最後まで余韻が続く、素晴らしい出汁シャブに仕上がりました。
肉のに関する内容や、出汁のレシピなどはまた次回にご紹介します。