2025年4月、第三回ジャパニーズ和牛ワールドオークションが開催された。
本イベントに関わらせて頂いた者として、感じた事をこの記事で語りたい。
コロナの明けた2023年の第一回から、少しづつお手伝いをさせて頂いている。
年々、内容が進化していてイベントとしては唯一無二の内容に仕上がってきている。
またそれらの経験から得られた体験から、町のお肉屋さんで働いている、私のような
肉職人が普段の仕事で実は密接に関りのある事があったり、海外の方と交流する事で
気が付いた事など、かなり貴重な経験を得ている。
また、このイベントに参加する事で初めて知った事や、これまでには無かった
考えも芽生えてきた。
その中で特に最近、強く思う事がある。
それは、日本の和牛はつくづく、車と同じだな、と。
この表現は決して命を軽く見ている訳では無いのは先に申し上げておく。
生き物の命を頂き、それを商いとして行っているのだから軽視は決して
許されない。有機物、無機物の違いではなく、産業の構造としての話だ。
日本の車は今や世界中で走っている。
では、その材料は日本で取れた物を使っているかといえばそうでもない
のは周知の事実だ。車を構成する主な材料は鉄やアルミなどの金属と、
樹脂、そしてセラミックが3大原料と言われていて、どれも国内で原材料
が取れるイメージは無い。特に金属は現役で稼働している金属鉱山が国内に
ほぼ無い事から、全てを輸入していると言えるだろう。
鉄鉱石から鉄を得る工場や技術は国内に拠点があったり、原油から
樹脂を創るのも世界的に有数な化学メーカーが行っているがどれもいわば
加工を施している。これらの得られたものを基に、日本独自の技術で
組み立てて車と言う製品に仕上げているが、産業構造的に和牛も同じ
部分がある。
和牛は明治以降に品種が同定された、日本固有の品種だがいわば遺伝資源
である。この資源を育てているエサの国内自給率は、諸説あるがおおむね
10%程度であり、海外の資源に頼っていると言っていい。日本独自の遺伝情報
も、それを製品化する為には海外の資源が無ければ出来ない現状だ。
そういう意味では、日本と言う国は中間加工や、最終加工が得意な国で
あり、技術に支えられている、技術しか無い国だとも言える。
そういった背景の中で、和牛の精子が海外に持ち出されたり、
和牛製品の安売り競争が起きている現状に私は一肉職人として、何とも言えない
気持ちになっている。
技術だけが頼りの国で、その根源を一時個人の利益に目が眩み、持ち出したり
海外の資源を日本のお金で購入して、仕上がった製品を海外で安く売りさばく。
自社だけが儲ければ、あの会社より利益を、1社が利益を独占する状況が許せない
など理由は色々あろうが実に嘆かわしい。なんと品質の低い商いだろうか。
先人たちが苦労して切り開いてきた道を、後発組は浅はかな考えで通る。
そりゃ自由経済だから、法に触れなければ何をしても最終的に儲けた者が
勝者であろうが、そこに仁義はないのか。-----
最終製品である和牛を、海外で安く販売するという事、それは
小麦を
デントコーンを
相手国の足を舐めて買っているに等しい。
ちょっと大げさな表現かもしれないが、あながち間違いではないはずだ。
私は実際の輸出、それらの現場に関わった事が無いので、あくまで外野の
ヤジかもしれないが、海外で和牛ビジネスを展開している企業さんには、
安く売るだけではなく、高く売る工夫も是非是非、して頂きたいと思っている。