第2話 肉職人たちの誇り

2024年6月某日

 キックオフ会議の遡る事1か月ほど前。

 今日は加古川食肉センターのすぐそばにある、大樹商店にお邪魔している。

 ここは私がミートマイスタ―の資格試験の際にお世話になった会社で、いわゆる

師匠の会社となる。久しぶりに師匠の会社で、捌きを見学した。

 今回のジャパンビーフフェスティバルでは、他のフェスにない、絶対的な目玉が

欲しい。前回は150年を”祝う”フェスだったが、今回は次の歴史を”創る”フェスにしたい。

その為にも、加古川にしか出来ない、そして加古川食肉産業の歴史に残る様なインパクト

のあるコンテンツが必要なのだ。

 この時点での私の頭の中は、熟練の職人が肉フェス来場者の前で牛を捌き、肉を磨いて

BBQに供するコンテンツを描いていた。彼らの技術がこのコンテンツのすべてを支える

と言っても過言では無く、牛の骨を美しくかつ正確に、そして迅速に捌く作業を見ると

圧倒された20数年前の私の様に、驚きと感動に包まれるに違いない、と考えていた。

 熟練の職人が和牛の枝肉を前に、一つ一つの部位を確認して丁寧にカットしていく。

美しいサシが入った肉をまるで芸術家の様に切り出していく様は、かならず唯一無二の

コンテンツとなる。そう確信していた私だが、実現には大きな障壁があった。

マグロの解体ショーは大丈夫

 なのに、肉の解体ショーとなると、とたんに信じられないぐらいハードルが高くなる・・・

 解体ショーの後に、刺身で販売できるマグロは良くて、加熱調理が前提の肉が何故、

ダメなのかを具体的に説明できる人が居たら教えてください!!←切に

 このコンテンツを開発して、9月の肉フェスに間に合わせるのは無理か。

 そう思った私は、プランBをやるしかない、と決心した。


 「加古川の肉で世界に挑戦するんだ。」

 食肉センターに関わる、加古川の食肉産業従事者にとって、和牛は単なる

食材ではない。「誇り」そのものだ。その誇りに、世界一の称号が付く。

 9月のフェスティバル当日に向けて、残すところ3か月余り。

 果たして今からの準備で間に合うのか。

 果てしない不安が胸一杯に広がっていたが、弱音を吐いている場合では

ないのだ。

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