事前準備

 ローストビーフの作り方のお話し。

 貴方はローストビーフをどの部位で作りますか。うらいでは、

① ウチモモ

② トウガラシ

③ イチボ

④ サーロイン

 この4つが原材料に肉になっています。

 まあ、どんな部位でもローストという加熱方法を施せば、ローストビーフになるのですが、事前の準備がけっこう大事です。加工肉全般に言える事ですが、原料肉は出来る限り新鮮な方が良いです。これは、ゴールをイメージして加工を施すのが大事だという事です。ここでは、うらいでの処理について表してみます。

 ローストビーフから少し話は逸れますが、ハム類なんかもこの考えが大事です。出来る限り新鮮な原料肉を、ハムにするためというゴールを目指して加工します。熟成が進んだお肉だと、筋肉中の成分が変わってしまい、そのゴール設定の為に色々と添加物を加えないと、ハムの特徴が失われます。

 

 ローストビーフの事前準備としては、ドリップ処理です。余分な水分を処理しながら熟成させ、目標の味に到達するよう、原料肉をコントロールします。ハムだと、この時に塩や砂糖などの調味料は添加していますが、うらいのローストビーフでは塩などの添加はこの時点ではしていません。

 添加すると、保水力が上がるのでメリットですが、肉らしい食感が失われてしまい、デメリットにもなります。色々と試行錯誤した結果、現在では行っていませんが、レシピ自体は良く見直すので、もしかすると今後行うようになるかもしれません。

 食感のコントロールは、添加物無しで行うには凄く難しく、一度肉らしい舌触りや歯ざわりを失ってしまうと、再び与える事が出来ないので”肉らしさ”はうらいのこだわりポイントです。

 一定期間熟成させたのち、塩などで味付けしたらネットを巻きます。このネットはなかなか優れもので、形を整え加熱によるダメージを和らげる効果があります。温度の変化が起きると、肉から水分が蒸発するのですが、その反応を穏やかに抑える効果があり、つまりジューシーに焼けるという事です。

 ここまでが焼く前までの事前準備です。

個性の出る焼き方

 準備が整ったら、お肉をやきm、、、ません。まだ。

 次の工程は、肉のプレヒート、温度の調整を行います。これは、冷たい牛肉にいきなり高温(焼く)を与えると、急激に縮むのを防ぐ為に行います。15℃ぐらいの場所で大きさにもよりますが、1時間ほど休ませます。勿論、ただ単に温度を上昇させると衛生的に良くないので、ここでも事前準備の大切さが出ます。中心は冷たい、外は熱いという環境はお肉に優しくありません。

 さて、お次はフライパンを熱し、お肉の表面に香ばしい焼き色をt、、、、まだ、つけません。

 次はオーブンに入れます。うらいでは焼き色は最後につけます。

 「えっ?!表面焼き固めないと、美味しい肉汁が全部出ちゃうよ?うらいさん、そんな事も知らないの?大丈夫?」

 と、思った貴方はお料理が相当お好きなはず。

 ですが、、、、、

 お肉にはこの方が良いのです。これは、表面を焼き固めても肉汁の流出を防ぐことは出来ないという科学的知見によるものです。そうなんですよ、あれって根拠がないのです。というか、根拠が無いどころか、肉汁はむしろ逃げます。

 先述したように、温度の急激な変化はよくありません。そこで先にローストを施し、最後に表面を焼くという工程になる訳です。実際、この方法の方が、歩留まりが良いです。5%程度は変ります。変わるのは、水分の蒸発量なので、中のジューシーな肉汁がそれだけ天に召されているか、いないかは大きな差だと思います。

 僕も当初この方法を聞いた時に、「そんな事は無いだろう。」と高を括っていましたが、やってみてビックリ。( ゚Д゚)。論より証拠。このブログを読むという稀有な存在の貴方は、是非ともこの記事に騙されたと思ってやってみて下さい。

 焼き加減、中心の温度をどうするかはお好みですので、ここではあえて書きませんが、到達する温度により肉の仕上がりが大きく変わります。これは、タンパク質が変化する為です。大きく分けると、

30℃台・・・生肉 ダメ、絶対×

40℃台・・・ほぼ生肉の食感。最近の飲食店さんでよく見かける温度。※

50℃台前半・・・僕はこの温度帯が一番好き。肉の食感が変わり、風味が出てくる。

50℃台後半・・・肉の中まで焼いた時に出てくる風味が多くなってくる温度。

60℃台前半・・・教科書の温度。(63℃)この温度を境目に肉はどんどん固くなる。

60℃台後半・・・固い。まさにウェルダン

70℃以降・・・ただただ固い。ぼそぼそ

 これ以降は炭に近づいていきます。(炭化)

 ※この温度帯の良さ、怖さを知りつつコントロールして提供しているな、という飲食店さんは少ない感じ。低温には大きなリスクが伴います。

 中心の温度も大切ですが、そこに到達させる時間もとても大切です。うらいでは1kgのお肉だとおよそ3時間かけて焼き上げます。こうすることで、全体に均一に温度が伝わり、美味しく仕上がります。

仕上げ

 いよいよ焼きあがっても、直ぐには切らないで。中の肉汁が落ち着くまで、10分は待って下さい。うらいでは、中心まで均一に冷やすために、真空冷却機を使い冷ましています。これは真空中の沸点の低下を利用し、気化熱で食品の温度を下げる装置です。これにより風味の向上と、鮮度が保たれます。

 

 後はお好みの召し上がり方で楽しんでください。

 うらいではローストビーフをこのように考えていますが、これが必ずしも正解ではありません。作る方それぞれに個性があり、その数だけ美味しさがあると思います。ただ、作り方ももちろん大切ですし、私たちのレシピでもこのブログで明らかにしていない点など、様々な工夫はあります。しかし、一番大切で、かつ私たちが自信のあるもの、それは

一番大切

 やはり原料肉、と言えるでしょう。ここが1番真似しにくい点だと思っています☆

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