肉マゲドンともじられたシーン

 前回からの続き⇒

 お会計。。。ウウウ

 加古川で最も高価な焼肉のお会計が気になる私と、目の前の美味しそうな雰囲気に

葛藤する私。撮影スタッフの皆様は、誘惑に負けたのか箸がどんどん進む。

 「ウマっ!!」

 「これが神戸ビーフか!!!」

 写真撮影、動画撮影も箸と同じくどんどん進み、カツメシにやられたはずの膨らんだ

お腹にどんどん引き込まれていく。美味しいお肉は別腹だったのか。

 ふと時計に目をやると時刻は12時半。

 そろそろ次の撮影場所、加古川食肉センターへ向かわなくては。

 その前に、美味しさの代償を払わなければならない。

 恐る恐る、社長に伺う。

 「あの~、今日のお会計は?」

 声は恐らく小さかっただろう。なにせ、カツメシを食べる撮影と聞いていたので、私の

財布は余力に乏しかった。心配だ。このままではお皿を洗う羽目になるのではないだろうか。

 そんな私の小心ぶりは、新田社長のたった一言で消え去った。

「そんなもんいらんいらん。」

えー?

 いや、めっちゃ食べましたけど?

 そんなやりとりを遮るように、

「加古川の肉を紹介してもらうのに、金は取れん。さあ、センター行こ。そろそろ時間や。」

 男前全開の社長に促され、志方亭さんを後にした。新田社長の男前ぶりは、この後も続く。

競り市

競り前の枝庫と写り込む私

 

 場所を移動して加古川食肉センターへ。ここは牛の屠畜や競り市を行う場所で、なんと今年で

150周年を迎える、歴史ある加古川食肉文化の中心地だ。競り市は買参人と呼ばれる、牛を買い

付ける各企業の仕入れ担当者が一同に集う。その多くは、取締役などの重役で、仕入れが如何に

大切かを物語っている。そういう意味では1従業員の私は珍しいかも知れない。

 現在の競り市の仕組みは、近代化されており1頭づつ順番に出てくる牛に対し、最後まで購入

する意思を表した事業者が落札する仕組みだ。これを手元のボタンでコントロールする。この

一連のシステムは事業者登録カードの情報を紐付け、誰が最後までボタンを押しているかが牛の

行方を決める。

加古川食肉センター買参人

 今回の競り市は通常開催されるものより大きな規模で、開始前から買参人の熱気が漂う。

 出品される牛の中で、最も品質の高い牛に最優秀賞1頭、次点に優秀賞2頭と優良賞2頭

と賞が付与され、競りが始まる。神戸ビーフであれば、通常でも100万円は軽く超える、

手に汗握る戦いの始まりだ。

 賞が付いている牛であれば、200万や300万を超す事も珍しくはない。この賞付きを、

志方亭の新田社長がこの日2頭購入。繁盛店である事は間違いないが、撮影の加減から

無理を強いたのではないかと後日、お伺いしたが理由は違っていた。

「賞付きが加古川和牛やったやろ?そりゃ、加古川市内でしか食べれんように努力せな。」

 ここでも男前ぶりを遺憾なく発揮。最優秀賞の牛は、丹波の生産者さんだったが、次点は

加古川の生産者さんだった。こういった取り組みが、ブランドの価値を創っていくのだと

思わず唸ってしまった私だった。

表彰式

 競り市の緊張感は、年数を重ねた今でも私は感じる。

 今から20数年前、私が初めて参加した競り市もこの加古川食肉センターだった。

 神戸ビーフの地域ブランド共励会という、年に1度しかない大きな舞台がデビューだった。

そこで一生忘れられない失敗を私はしでかすのだが、その経験が今も生きていると思う。

 

 私の勤める和牛うらいは、雌牛しか使用しない。そんな和牛うらいから来た若造が、

去勢牛を順番を間違えて落札してしまったのだ。当時、私は買参人席の最も後ろの席に

座っていたのだが、落札して落札者が表示された次の瞬間、ほぼ全員が私を見るのに

後ろを振り返った事を今でも鮮明に覚えている。

 初心者の私は、自分が去勢牛を競り落としているなどつゆ知らず、なんか注目されてるやん、

なんでやろ?と少しばかり疑問に思ったものの、競りが終わるまで気が付かなかった。当時、

店長だった現社長が競り後に飛んで走ってきた時に、何かおかしい?(;^ω^)

とようやく自分の失敗を気が付いたのであった。

 あれから20年が経ち、私もようやく職人と呼ばれるレベルになってきたと思うが、そんな

懐かしい、苦い思い出を何故かこの撮影中に思い出した。

 競り後に、動画の中で絶対に入れたいカット、志方の肉屋が並んで歩いているシーンを

撮影したかったので、イチハラさんにもご協力頂き撮影した。後日、このシーンをみた方々が

口々に、

「肉マゲドンや。」

と、90年代のハリウッド映画からオマージュしたシーンをもじられた。

 なんとなく、ちょっとカッコいいシーンが撮りたかったのだが、なかなかにいい感じだったと

思う。

 その後、競り市で落札された枝肉の搬出シーンを撮影した。

 この時、特に意識していなかったのだがとてもいいシーンが取れていた。

 知り合いの卸会社社長さんが、何を見ていたのか、空を鋭いまなざしで見ていた一瞬

を抜いていたのだ。ご本人にこのシーンを見せると、

多分まぶしかったんちゃうか?ww

なんてボケの教科書に書いていそうな回答が返ってきた。

 

さあ、次は私の師匠たちがいる加工場へ。

次回へ続く。

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