牛肉の品質を示す指標

 さて、本章を読んで下さっている稀有な貴方、加熱損失をご存知ですか?加熱損失とは、肉(食材)に対し熱を加えた際に失われる重量の事です。

 少し例を出してみましょう。

 貴方は肉屋さんからローストビーフ用のお肉を購入しました。重量は

3818g。

黒毛和牛イチボ

 このお肉を自慢のフライパンとオーブンで焼き上げ、中心温度は55度で仕上げました。

 するとお肉の重量は

3384g

 になっていました。3384÷3818=0.8863…. つまり、調理により約11%分、損失した訳です。

 これが加熱損失です。単純に歩留まり、でも良いかと思いますがこの損失はどんなお肉でも発生し、大きいブロック肉よりも体積の小さな焼肉用やすき焼き用、そしてシャブシャブやステーキなどはもっと多くの損失が起こります。

 この事を意識した事があるという、一般の方はほとんどいないのではないでしょうか。わざわざ焼肉を行う際に、生の状態と加熱後の重量を計測する人はいないでしょうから。居たらかなりの変人に間違いありません!(笑)焼肉ですと、焼き加減にもよりますが損失は30%に及ぶ場合もあります。(ミディアム程度で)

 失われている重量の正体は主に水分です。つまりドリップですね。これが、冒頭の副題に書き表した、品質を表す指標である由縁です。ドリップ処理を適切に行っていない牛肉は、加熱損失が大きく水分と共に灰汁も含んでおり、これは鍋物をした際にはっきりと違いとなって現れます。

 また高品質のお肉は、水分を閉じ込める力が大きいので、ジューシーさが失われません。ここも重要なポイントです。私は飲食店さんで食事をする際、この加熱損失をいつも見ており、良い処理をされているな、高品質な食材を取りそろえているな、という判断に活用しています。

 牛肉の品質を、視覚情報から判別することはかなり難しいですが、このような行動を繰り返していると、なんとなくこういう見た目のお肉が美味しいな、という事が少しずつですが解るようになっていきます。これが私達、肉職人が行っている目利きの1つです。

 それではまた👋

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