マレーシアという国をご存じだろうか。

 私自身、名前を聞いたことはもちろんあったが

正確な国の場所や言語、首都などの重要な情報さえ

”名前は知ってるけど知らない国”

だった。

 ただ、なんとなく、「東南アジア?」

「オランウータンがいる島国?」

程度の知識しかなかった。

 このような私のマレーシア感はつい先日、

ご縁あって肉について一緒に研究する機会に

恵まれた事により随分と変化する事となる。

マレーシアの方は

”とても気さくで”

”とても勤勉で”

”とても正直で”

”とっても愛嬌の”

ある方達だった。

 まあ、これとてたった2人の方と接した

だけなんで、正しい訳では無いと思うのだが、

異なる文化で育った人と、交流し一緒に仕事をする

事により知った、

”私の中の真実”

なのである。

 ご一緒するきっかけは、いつも共同で肉に関する

研究を進めている神戸大学さんからのお誘いだった。

【マレーシアの大学と一緒に、和牛についての研究を行う】

 マレーシアはイスラム教徒が国民の6割を占めており、

和牛に関しても専用の”ハラール”屠畜に準拠したものでなければ

食する事が出来ない、非常に厳しい戒律が存在している。

 ハラール肉は輸出を行っている企業か、イスラム教徒向けの

飲食店を経営していなければ取り扱う事がまずない代物なんで

ハラールミートを取り扱う事は私自身、初めての体験となった。

 顔合わせは国内でも珍しく、また兵庫県内ではここしかない

【ハラール専用屠畜場】である三田食肉センターとなった。

これに先立つ事数か月前、事前準備と挨拶をかねて私は訪れており、

その際に職員の方と交流を深めて受け入れ態勢を整えていた。

 三田食肉センターはなかなか面白い場所で、ハラールミートを生産

する為に職員のほとんどがイスラム教教徒、及びマレーシア人で

メッカに向かって行う祈り専用の部屋があったり、休憩室から屠畜場

までの隙間にロープが垂れ下がり、洗濯物が干されていて風になびいて

いたりと、東南アジアの様な雰囲気が醸し出されている。

 このような、まさにマレーシアで肉を学ぶ方にとって最高の(?)

環境の中で2人のマレーシア研究者を迎えた。

1人目はサルマ教授。

2人目はアリア助手。

 ヒジャーブ(イスラム教徒の女性が纏うベールの様なモノ)

に身を包み、マレーシアの民族的な柄であろう留め具を

纏った彼女たちは、屈託の無い笑顔で挨拶をしてくれた。

 マレーシア国民大学とは、非常に優秀な大学で同国内でも

トップクラスの大学だそうだ。世界の大学をランキングしている

QSというランキングで世界144位につけており、これは同ランキング

で200位前後の早稲田大学よりかなり上だ。アジアでは33位となって

おり、日本でいえば旧帝国大相当の学力を有しているという事になる

かと思う。

 彼女たちは牛の研究者で主に超音波による肉質の解析が

現在のテーマなんだそう。日本でも一時期、進められていた

事があった模様だが現在では行っている研究者は少ないそうだ。

わかりやすく言えば、マンモグラフィーで肉質を調べている

という感じだろうか。

 研究内容を拝見させてもらうと当時に、同国での食肉事情

についても教授頂いた。当たり前のことだが、和牛は日本固有

の牛の品種であり、他国には異なる牛が存在していて、家畜として

活用されている様子を異国の方から聞くと、なんだかワクワク

してきて

「面白い!」

「もっと知りたい!」

が止まらなくなるのであった。

 マレーシアで生産されている牛は

主に「ブラーマン種」という種類で背中に

ラクダの様なコブがある。熱帯原産の

コブウシという牛が先祖となっており、暑さに強く

病害にも耐えうる屈強な体を有しており、寿命が長い

事も特筆すべき点となっているらしい。

 肉は真っ赤な感じで”サシ”は微塵も見当たらない。

 家畜として現在、育てられている牛は原種となる

牛から2つに系統が分かれており、わかりやすく言えば

コブがある牛と、ない牛に分かれているそうだ。

こんな基本的な事も、日本だけで和牛のみを扱って

いる私は知らなかった事実だ。因みに彼女たちは英語で

話しかけてくるが、当然の事ながら私は理解できないので

半分を神戸大学の上田先生に、もう半分は三田食肉センター

の通訳、アフィック君に訳して頂いた。

 因みにこのアフィック君、アイドル顔負けの男前で

マレーシア人と日本人のハーフだそうだ。またレベルが

高いのは顔だけではなく、3か国語を操るバイリンガル

でもある高スペック男子で性格も最高に良い。

こういった出会いもまた、各地に赴く楽しみの1つだ。

 少し話が逸れてしまった。

 上田先生はこういった、家畜としての牛に対する基本的な情報を

当然のことながらお持ちで、肉を切る事に特化した私は、肉に関して

まだまだ知識を高めていかなければならないと痛感した次第だった。

世界はまだまだ知らないことばかりで、未知に溢れている。

 

 次回は彼女たちの研究紹介と、官能検査について記したいと思う。

 

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