昇温は最大の敵😠

 暑い。まあ、こんなことは改めて私が言う必要はないだろうが、お肉屋さんで働いていると常に冷房の効いた部屋で作業しているので、休みの日以外感じる事が実は余りない。

 そんな私でも、ここ最近の暑さは感じるようになった。私たち肉屋が誇るクーラーが悲鳴を上げているのだ。作業スペースの広さは25坪ほどあるが、その中に3馬力のクーラーを4台構えている。全開にすれば何とか保てるが、この光熱費が高いご時世。少し油断したり、ケチってしまえば暑さで肉が溶けてしまう。

 肉の昇温は厄介だ。菌の繁殖を起こして傷みやすくなったり、たんぱく質が変性して理想の熟成に導けなかったりする。そして、柔らかくなったお肉は作業性も悪くなる。美しい肉磨きには、定温で維持されている事も重要な要素。何でもこの暑さは12万年ぶりの暑さだそうで、そりゃ現生人類は体験した事無いわ(笑)

 室外機のガスが高圧で止まりそうになるので、頻繁に水を撒くのだが、たいてい室外機の辺りには猫や虫が居て涼んでいる。この高温、少しでも涼しい場所を求めているんだなぁ思う。涼んでいるところ、申し訳ないが水を撒かせてもらう。当然ながら、水が来ると一目散に逃げるのだが、気になって後で見てみると、直ぐに元の場所に戻っていた。水を撒く前の室外機の風は、まるでドライヤーの様な温風が出ているが、それでもここが涼しいのだろう。

肉の温度変性

 調理による昇温で、起こる肉の変化は知られているところであり、特段意識していなくとも皆さんはその恩恵を受けている。例えば、焼肉を行うと表面の温度は糖質類が香ばしく変化する反応(メイラード反応という)だったり、たんぱく質が変性して水分が抜け固まる事による物性(テクスチャー)の変化などは美味しく食べる為に必要な変化である。

 そういった好ましい変化は狙って起こすものであり、食べないのにわざわざ加熱する人は居ないだろう。また肉の変化は低温から、指先の熱や室温が高いことにより起こる昇温、30℃ぐらいでも十分に変化する。これば起きると熟成のコントロールに良くない影響を及ぼす。特に私たちのように1か月を超える熟成を施して製品化する場合など、経時変化を以って理想のお肉になるような技法を用いている場合は細心の注意が必要だ。

 そう言った観点から、夏は特に気を使う。そしてこの猛暑。私はすき焼き肉とシャブシャブ肉を担当しているが、体積が小さくなると肉がやられるのがより速い。雌牛なのでもともと柔らかいのだが、もう少しでも持ち場を離れると持てなくなるぐらいお肉がフニャフニャになってしまう。

ああ、早く冬になって欲しいと願うのは私だけだろうか。。。

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