トロ

サシ

美しいサシが映える、サンカクバラの筋引き解説の回。

体表側のスジ

 筋引き解説であるから、一枚目の写真はスジ。

 銀色に輝くスジ。サンカクバラの体表側のスジは、出来れば1枚で繋げて磨きたい。

 映えるお肉を作るのは、優れた技術から。

技術解説

 それでは当社の手順で説明する。

 まず、私たちは内臓側から処理する。通称、ゲタと呼ばれる面を処理するという事だ。

 ゲタには、内臓由来の内膜がほぼ付着しているので、これを包丁、若しくは手で剥がし

てから、下駄のスジを引く。(磨く)ゲタが終われば、次は残っている骨肌(筋肉と骨

の間にある硬い膜)を取り除く。

 この骨肌、捌き(脱骨)の時にどう処理するかの論争があるが、私のような小売店の

立場から言えば、付けない方が望ましい。卸売事業者から見れば、骨につければお金に

ならない、販売重量が減る、ドリップの流出が起きやすく商品価値を下げるなどの、

デメリットが目立つので、骨肌は恐らくつける事が推奨だろう。

 しかし、こういったデメリットは自社で加工するする我々にとっては、メリットを

享由するよりデメリットの方が大きい。

 それはこの骨肌を取り除く際に、大切な肉がそちら側についてしまうからだ。

これは技術で解決できると言えるのだが、よほど鋭い包丁で、熟練の技を駆使しなければ

肉を付けずに取り除く事が難しい。

 なぜ肉がついてしまうのかというと、骨と筋肉を接合する膜である骨肌は、肉よりも

硬く頑丈で、極めて正確に包丁を入れなければ肉が付着する、或いはスジを持ち上げる際に

下の肉を割いてしまう恐れが大きいからだ。骨肌に関して言えば、他の部位(ウデなど)

に敢えて残す方が良い場合もある。が、サンカクバラのゲタの様に、ゲタとゲタの間隔が

牛の大きさにもよるが、狭い場合は他のゲタにまで干渉してしまい、結果肉へのダメージが

大きくなる。(狭ければ3cm程度)

 お店によっては、先にゲタを全て外してからという選択もあるが、その際も骨肌を取り除く

際の歩留と、初めから付けずに捌き処理する場合とでは大差が出るのでお勧めしない。

 そして少しでも残留すれば、極めて硬い膜なのでヘタをすれば異物混入だと言われかねない。

私は勿論できるが、全てのサンカクバラを処理する訳ではないので、平均して良い結果を導く

捌き時に骨肌は残さない、という選択を支持する。

 自社で加工する私達にとって、ドリップの問題は技術で解決出来る、様は深メスをせず、

筋肉に余分な切り目を入れなければ、そういった心配は起こらない。

内側の処理

 上記写真は内膜、スジ、骨肌を処理した状態。ゲタは全て外すという事業者さんはゲタを最後に

外せば良い。また、首の部分から続く赤身の肉もこの時に外しておく。ここの呼び名は様々であるが

私たちはカブと呼んでいる。

表面側

 内側が終われば、次は体表側だ。まず、表面の脂をしっかり除去する。脂も繊維方向が

あるので、それに沿って剥がしていく。脂の繊維方向はスジに準拠する場合が多い。

サンカクバラの脂は階層化しており、一度に包丁で取り除く事は至難の業。しかし皮下脂肪

を残していては、美しい映えも出ないというもの。うらいでは大まかに包丁で取り除いた後、

細部はスプーンを使い脂を取り除いている。また途中にある神経束は繊維方向に平行に引き、

包丁を束に沿いながら進めると美しく取れる。表面の脂肪はキッチリと取り除いておこう。

 体表側のスジを磨くのは、サンカクバラ最大の難所だろう。サンカクバラの表面は、

なだらかに見えて実は結構な起伏がある。僅かな起伏と言えど、包丁でそれを追いながら

スジを磨くわけであるから難しい。

 表面をミートハンマーで叩きならしたり、上から手などで押さえつけてならすとスジが

引きやすくはなるがお勧めはしない。サンカクバラは一定以上の力が加わると簡単に構造

が壊れる。包丁のグリップでグリグリする職人さんもいるが、あれもうらいでは同じ行為

として禁じている。あくまで肉を優しく、元来持っている柔らかさに応じて、ここでも

スプーンを使い優しく整える。

 うらいではスプーンを多用しているが、かなり便利だ。色々と役立つのは体感してもらえば

判るかと思うが、何より金属製であるため衛生的に扱う事が出来る。肉に直接接しても全く

問題は無い。そして、最も優れた点は、肉に対する効力の加減であると私は考えている。

包丁でこの効果を再現するのは至難の業で、脂を取る、面を整えるなどの繊細さは唯一無二。

スプーンを使い、肉を整えるのはうちの社長が発案なんだが、もし誰かほかに居れば教えて

欲しい(笑)

 

 表面の皮下脂肪が取れ、スジを磨くために表面を整えれば、スジを磨いていくわけだが、

サンカクバラは少しの狂いでも包丁の軌跡が残るほど繊細な部位。スジを左手でコントロール

しながら、肉に跡が残らない様に正確な包丁さばきが要求される。

写真を参照に、ぜひあなたも取り組んでみて欲しい。

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