【続・夏の思い出】
幼き頃の夏の思い出。あれは小学校に入って初めての夏休み。夜中、何故か目が覚めた私は窓から日頃遊んでいた、家の目の前にある公園を月あかりを頼りに眺めていた。この公園は通称、キリン公園と呼ばれていて、キリンの形をした遊具がその名前の由来である。この公園は、東側が遊具や砂場などがあるエリアで、西側は小高い丘の上に東屋があり、その他は広場になっていて、近所の子供たちやお年寄りが集う、人気の場所だった。
また私が住んでいた場所は準工業地帯で、空き地が多く野良猫や野良犬が当時、とても多くその野良達も公園をウロウロとしていた。まあ、これは日中の話で、夜中は誰も居ない・・・はずの公園で、猫の鳴き声が聞こえる。東屋の方だ。耳を澄ますと、1匹2匹だけでは無い。鳴き声は次第に増えていき、どうやら沢山の猫が集まっている様子だった。家の窓からは東屋の中の様子は見えず、水銀灯に照らされた薄暗い公園の広場は、幼い私の好奇心を最大限に駆り立てた。「そっと行って、猫が何匹いるのか見たい!」と思った私は、同居する祖母を起こさぬよう、そっと玄関から公園に向かった。
そこで見た光景は今も忘れられない。公園の入り口から見ると東屋の中央に、近所の飼い猫“クロ”(クロネコ)が陣取り、その周りを多数の猫が取り囲み、鳴き声を上げるわ、上げるわ。入口にいた私は、そのまま東屋へ進む。数十、いやもしかすると百を超えているかもしれない猫たちは私に構うことなく、鳴き続けている。やがて東屋の中央に着いた私は、クロをいつものように撫でる。クロは嬉しそうに一鳴きし、ゴロゴロとすり寄って来た。やがて、クロを撫でながら私は寝てしまっていたようで、ふと目が覚めたその時にはあれだけ居た猫の姿は無かった。???寝ぼけたのか、夢なのか。次の日、祖母に話すと勝手に夜中に抜け出た事をしっかり叱られた後、それは猫の集会だと教えてもらった。
(➟次回へ続く)