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 今回のお話しは輸出。

 実は輸出の事に関しては、ほとんど知らない。

というか、知らなかったというのが本当の所だろうか。

2回このイベントに参加させて頂き、ようやく少しだけ見えてきた

という感じだ。

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 現在、40か国を超える国々に輸出出来る姫路の和牛マスター。

屠畜頭数は全国でも指折りの処理数を誇り、名実ともに日本の

輸出拠点である。

 輸出される品目は”牛”

 取り扱いブランドは様々で、北は北海道から、南は鹿児島まで選りすぐられた

生産者が軒を連ねており、様々な海外からのニーズに応えている。

 輸出に供される部位は、その殆どがサーロインとヘレ。

 残りは国内で消費されることとなり、輸出用のサーロイン・ヘレを高単価

で仕切り国内に残る在庫の原価を抑え、販売における好循環を生み出している

事が特徴。異なる事業部同士が共通の目的に向かい、手を取り合って大きな

目標を達成し続ける集団になっている。

 しかしながら輸出先や引き合いの増加、他社の戦略なき輸出に伴う、単価の

低下などの影響も侮れない事態になっている模様だ。

 輸出先や引き合いの増加は、単純に売り上げの増加となり喜ばしい事

だろうが、その輸出に供されるのはサーロインやヘレ。残りは国内で消費

する事となり、生鮮品ならではの需給バランスのコントロールが難しくなる

だろう。まあ、この問題に関しては国内の在庫コントロール適正化や地域の

偏りを無くす分散化、物流改善などが有効かも知れない。

 問題はもう一つの戦略なき輸出。

 これはかなりの大問題で、国内の販売力が足りずだぶついた不良在庫を、

安く海外に叩き売るという、愚行。これは究極に頭が悪い方法で、何がダメ

って全部ダメ。まず、努力が足りない。国内の売れ行きが先細りする事なんて、

今から20年前には予想出来ていなければダメ。

 で、適当に販売し続けたしわ寄せを海外に安く叩き売るとか、ほんとに

頭の悪さが滲み出ている。和牛ビジネスにおいて、相場を仲間内で崩しあう

のは国の特産品を1つまるまる潰すのと同じ事なのだ。そもそも、資源の無い

日本で、育てている和牛の餌は9割が輸入。小麦やトウモロコシを高く買い、

製品を安く海外に卸すなんてダメダメ過ぎる。もはや日本を弱らせる、陰謀

なのかと感じてしまうほどだ。

 和牛の将来は、観光と輸出に有りと目をつけ、手探りで始めた先人たち。

躓く事や思い通りにならない事なんて、幾らでもあっただろう。それらを

1つ1つ丁寧に、時に大胆に乗り越え築き上げてきた、海外での和牛の価値

や評価。そんな先人たちの血と涙で彩られた和牛の販路を、愚かな行為で

汚すのは本当にやめて頂きたい。

 この愚行、国外のみならず、国内でも行う事業者がいて、余った在庫を

中小規模の卸売事業者へ供給し、市況では考えられない価格で流通させて

いる。それも、需要の弱い閑散期に。

 これまでの営業努力は一瞬で水の泡。相場は崩れ、在庫は更に増えるという

悪循環。また、更にやっかいなのが繁忙期の供給は止める性根の悪さ。

 まあ、この問題はそんな大局を見れないビジョンなき企業と、それに

群がる中小企業がいる限り続くのだろうが、私としてはそんな奴らとは

関わらないと決めている。

 それと、先ほどから事業者と書いているが、少し訂正が必要だ。

問題の事業者は、全社を挙げてその愚行を行っているのではなく、一部

の部署がオカシイのでそんな状態になっている、という事は付け加えておく。

 また、事業部間の連携や、全社共通のビジョンが浸透していない事も

問題を大きくしている気がする。この点は、和牛マスターのような、オーナー

の全権をもって意思決定出来る企業との差、個性の違いとも取れる。

 輸出に関して書いてみたが、あくまで私の会社から見た意見なので、実際

の海外でどのように評価されているのかは判らないが、1つの意見として

参考にして頂ければ。

 次回は、30年後について書いてみようと思う。

 

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