箱罠猟の極意とは。

これまで2回に渡り、箱罠について、私の知り得る限りの情報を、

いわば備忘録として記述してきた。今回は、いよいよ核心部分の

餌について述べてみたい。

何で呼び込むか

誘引する餌なんて、何でもいいんじゃない?

狩猟を始めた当初は、私はそう考えていた。

イノシシは雑食で、かつ大食い。食いしん坊な

イノシシは、何でも誘引する事が出来るだろうと

高を括っていた。

が、適当に屑野菜を巻いてみたが、寄り付きもしない。

仕掛けているトレイルカメラには、ただただ風の音だけが

響く。

次こそは。

そう思えど、屑野菜は見向きもされない日々が続いた。

 ここで、初めて、師匠に尋ねてみた。

何もかも、手取り足取り教えて貰っていたのでは、成長できないと

考え、「自分でやってみます!」など生意気を抜かしていたのだが、

屑野菜へ見切りをつけた私は、百聞は一見に如かずと師匠の箱罠

を見せてもらう事にした。

 いざ見せてもらうと、実に奥深い。

餌の種類や撒き方が実に合理的であり、理に適うとはこういう事かと

腹落ちした。イノシシはグルメである事や、好き嫌いが個体差である事、

また警戒心が非常に高く、臆病な事。嗅覚が良い事も知った。

要は、食いしん坊だけど、やたら警戒心が高い。

 私のまき散らした、野菜屑など見向きもせずとも、山の中には

ご馳走が一杯。怪しげな、箱がある処の対して美味くないであろう

屑になど、群がるはずもない。師匠曰く、イノシシを獲りたければ

きちんともてなさないとダメだ、との事。以下、餌の種類とその配合

について述べてみる。

メインになる撒き餌は、米ぬか。

 比較的入手しやすく、かつ大好物だそうだ。その道50年の師匠が言うのだから

間違いない。この米ぬかを基本に、様々なトッピングであしらうのが良い。

特に、必要なトッピングは”塩”。

 野生下では、ミネラルの入手経路は非常に限られている。常に不足していると

考えても良いはずだ。塩を投下するかしないかで、誘引率は極端に変わってくる。

塩であれば、何でも良いのかもしれないが、価格の安さとミネラル分の多さから、

私は食品工業用の塩を使っている。これなら財布にも優しい。

 次に、嗜好性を高める、糖分。

塩に糖分を添加すると、更におびき寄せる能力が高まる。

これを追加すると、臆病な個体の理性もへし折ってくれている気がする。

色々試してみると、精製された糖より、例えば黒砂糖のようなミネラル分

が多い物の方が寄り付き方は良い傾向にあると思う。但し、黒砂糖は高い

ので普通の上白糖で十分だと考えられる。

 その他としては、例えば野菜でも水分量の多い、柔らかい野菜が好みの

ようだ。後は、酒粕やビール粕などの、酒類副産物。そして、果物。

果物でも、例えば柿のように安価に入手できるようなものがあれば、使い易い。

ただ、渋柿は崩れるほど熟さないと食べない。この辺りは、人間に近い感覚で、

出来る限り美味しそうなものや、高カロリーなものが適していると言えるだろう。

あとは財布との相談になるかと思う。

 今までの話を取りまとめると、私の四季を通じた、巻き餌は以下の通りとなる。

米ぬか+ミネラルの多い塩+上白糖 

塩と砂糖の配合比率は、おおよそ1%程度に留めている。

 イノシシの味覚について、詳しい事は解らないが人間だと0.8%程度が美味しいと感じる

人が多い。豚の原種であり、臓器の近似がある事を考えて今の配合にしいてる。

但し、全体をしっかり混ぜ合わせて撒いている訳では無い。米ぬかを少量撒き、

そこに塩と砂糖を振りかける。そして、箱罠の奥に行けば行くほど味が濃くなる

様にしている。美味しい、美味しいと奥に進めば進むほど、食が進むイメージだ。

 この撒き方にしてから、断然誘引できる機会が増えた。

ただ、シーズンの最初というか、狙い始めは入口付近でも同じ味の濃さに

近い感じで塩と砂糖を撒いている。あ、これめちゃ美味いやん。

みたいに気が付いてもらうためだ。そして、だんだんと興味が湧いてきて、

警戒しながらも箱罠へ進み、最後は安心して食べまくるという流れにしている。

 興味を引く、警戒心を無くすというのは、箱罠猟を行う際にとても大事な要素になる。

そういう意味で私は、トリガーに繋がる糸も年中箱罠内に垂らしているし、トリガーの

動く金属音も鳴るように、グリスを塗って滑りやすくした上、糸に繋いで音がワザと

出るようにしている。そうする事で、普段通りに餌を食べていたはずなのに、なぜか

入口が閉まった!となるのである。

 年中、糸が垂れ下がっていたり、ましてや自然界にはないであろう、金属音を

響かせていては箱罠に寄り付かないとお考えになる方もいらっしゃるだろうが、

それを防ぐ、警戒心を壊すための、餌に対する様々な配合の技を駆使している。

そうやって、様々な工夫を施してきた私の箱罠だが、最近ある事に気が付いた。

何故か、メスの入る確率が異常に高いのだ。

何故かメスが多い私の箱罠

なぜ「雌のイノシシ」が入りやすいのか

を推察してみたい。

まず、

結論から言うと、


今の箱罠設計+餌の性質が、雌の行動生態に強くフィットしている可能性が高いかもしれない。

以下、その理由を述べてみる。

1️⃣ 雌は「安全確認役」になりやすい

  • 群れ(特に母系群)では
    雌が先に危険を評価する役割を担っている模様
  • 餌場・新規物体(箱罠)に対して
    • 雄:避ける or 夜深くまで待つ
    • 雌:比較的早く接近し、確認する

👉 「最初に入る個体」が雌になりやすい


2️⃣ 米ぬか主体の餌は「雌・若獣向き」

米ぬかは

  • 高炭水化物
  • 植物性
  • 発酵しやすい

これは

  • 授乳・妊娠期
  • 群れ維持
    に向いた栄養構成です。

一方で成獣オスは

  • 高脂肪
  • 高タンパク
  • 動物性要素
    により強く反応する傾向がある。(後述する)

3️⃣ 味付け(塩・糖分)が「慎重な個体」を説得している

前述していますが、
ミネラル+糖分の組み合わせは“理性的な欲求”に刺さる

これが

  • 好奇心の強い雌
  • 群れを守る立場の個体
    を前に出している可能性が高いです。

4️⃣ 罠サイズ・踏板位置の影響

今の箱罠が

  • 通常の箱罠サイズより少し大きい
  • 踏板がもっとも奥

で運用されており、
体格差のある雄は無意識(?)に避け、雌や母系の群れが入りやすい状態にある傾向か。


米ぬか+海塩+砂糖の「味付け」評価


👉 かなり理にかなった設計

✔ メリット

1️⃣ ミネラル希少性への直撃

自然界では

  • ナトリウム
  • 微量ミネラル

は慢性的に不足しがち。

特に

  • 授乳中
  • 成長期
    の雌は塩分欲求が強くなります

2️⃣ 砂糖=即効性エネルギー

  • 嗅覚で分かりやすい
  • 摂取後の報酬感が強い

→ 「また来たい餌場」になりやすい


3️⃣ 学習効果が高い

一度食べた個体は
他の餌場より優先度を上げる傾向。

これは

  • 再訪率UP
  • 警戒心低下
    につながります。

❌ デメリット・注意点

1️⃣ 「賢い雄」が避ける可能性

成獣オスほど

  • 人工的な甘さ
  • 不自然な塩気

に警戒します。(人為的な要素)

雌に比べ、ミネラル欲求が低い傾向も合わさり、

👉 結果として
雌だけが入る罠になりやすい。


2️⃣ 錯誤捕獲リスク

  • タヌキ
  • アナグマ
  • シカ

にも刺さりやすい配合です。


3️⃣ 依存性が出る

長期使用すると

  • 周囲の餌への反応低下
  • 罠外餌への見切り

が起き、
設計変更(味の変更)が効きにくくなる場合があるかもしれない。

 少々長くなってしまったが、あくまで私の個人的な見解ではあるが

推察してみた。それなりに説得力があるのではないだろうか。

地の利も多分に影響していると考えられるが、雌が多いのは事実だ。

 推察の中で、動物性の餌にはオスが寄りやすい、と書いているが、

これも事実だ。私の師匠は、イノシシの内臓を湯掻き、餌に混ぜている

がこれを行うと雄が来やすいという。私の場合は、職業柄手に入りやすい

牛脂を刻んで撒いてみたところ、見事に雄がかかった。牙の大きさから

考えて、あれは5歳ぐらいだったと思うが、和牛の脂に吸い寄せられた

のだろう。

 余談ではあるが、和牛脂は渓流釣りでもその威力を発揮する。

毛針で全く釣れる気配の無い私が、毛針の先に少し牛脂を付けただけで

爆漁。余りの釣果に私は禁じ手としたが。チートはつまらん。

以上、今回は箱罠の餌について主に書いてみた。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です