箱罠猟を行うようになったきっかけ
前稿で箱罠猟について、備忘録的に取り留めもなく書いてみた。
本稿では、出来る限り情報を纏め、少ないであろうが訪れて下さった
来訪者さんが、「なるほど、そういうやり方、考え方もあるのか!」
と思って頂ける様な内容にしたいと思う。
まずは、私がなぜ箱罠猟を行う事になったのか、ゴールに至った経緯から述べたい。
私が箱罠猟を行うようになったきっかけは、見回り負担の少なさである。
くくり罠であれば、一度仕掛けたら必ず、捕獲できるまで何度も見回りを
実施しなければならない。その点、箱罠猟はトリガーをセットするまでは、
運用思想的にも自然の一部であることが望ましく、餌がふんだんに、かつ
定期的にある場所としてイノシシが日常的に使う場所として仕上げなければ
捕獲できない。よって、すっかり安心して餌を食べ続けるまでは、罠として
運用しないので見回りは最小限の頻度で済む。
私であれば、日中は肉屋の職人として働いている、いわばサラリーマンなので
毎朝見回りを行わなければならないくくり罠を仕掛ける事は、毎朝めちゃくちゃ
早起きして、もし獲物がかかっていたらその処理を行い、かつ出社時間は守る
みたいな早起きダブルワークサラリーマンになってしまうので、諦めている。
特に、年末年始の繁忙期なんかに「すいません!イノシシが掛かったので肉は
切れないです!」なんて言おうものなら、恐らく首が飛ぶだろう((((;゚Д゚))))
つまり、自分のペースで取り組む事が出来そうだったので、箱罠猟で狩猟を
始める様にした。これは正解だったと思う。
トリガーを掛ける際は、会社の閑散期や休日前に行うようにしている。また、
この点が非常に恵まれているのだが、私の猟場は私が勤める会社から車で10分
足らずの場所にあるので、往復30分もあればトリガーを仕掛けて会社に帰って
来ることが出来る。
この猟場である山は、知人の私有地で麓に趣味で取り組まれている小さな畑が
あるだけで、殆ど人が居ない環境になっている。名目上、私はこの畑の番人という
訳だ。また、地下水が湧き出て水飲み場があり、ブナなどの餌も豊富。こういう
場所は、私の師匠が曰く、「乳母のゆりかご」というらしい。山が折り重なり、
水が豊富で平地がある。餌も豊富で、つまり子育てにはうってつけの場所という
意味なのだそうだ。
箱罠猟を始める際に、師匠と何度も山を探索して、どこに設置すれば獲れるか
の検討を重ねた。師匠が、ここなら間違いないという場所に置いてみて、運用を
開始した。その際に師匠が言っていた事や、取り組んでいく中で気が付いた事
が多々あり、たかが箱罠、されど箱罠だとその奥深さに今も試行錯誤の真っ最中
でもある。
箱罠猟の定義付け
まず、最初に定義、ゴール地点を定めておくのが良いように思う。
もちろん、やっていく中で成長し、見えてくる事もあるだろうが
やみくもに進めるよりは、信頼出来るソース(例えば師匠の存在)から
得た情報で、ひとまず真似てやってみるのが良いだろう。
これは、どんな技能職にも共通するのではないかと、私は考えるが
まずはお手本となる、その道のプロをひたすらに真似て学ぶのが成長の
近道だ。肉屋の職人だと、5年ぐらいはひたすら真似る。途中、色々な
考えが浮かんでくるがやはり真似る。そうやって取り組んでいく中で、
自ずと工夫が繰り返され、やがてオリジナルとして仕上がっていく。
本物、こういう呼び方に少し抵抗はあるが、技能の高い職人が成す技は、
小さな工夫の連続であり、その真意や深層にまで簡単にたどり着けるものではない。
まあ、ごく稀に天才と呼ばれる人が、そういった道中を無視してとんでもない
実績を出したりするが、アニメのような展開はなかなか起こらない。
一説によると、達人と呼ばれる領域には、何事も1万時間で到達するらしい。
1日8時間その作業を行うのであれば、1250日、3年ほどで到達する事に
なる。実際は全くのルーティンばかりで過ごす事はないだろうから、
もう少し時間は必要となるだろう。
かなり話が逸れてしまったが、要は信頼できる情報を見つけ、それを
真似て取り組んでみると、いずれ成果がでるよ、という話であり、
箱罠猟も同じで、私は今もその最中である。
さて、箱罠猟の定義だが、私は以下の様に認識している。
- 狙った個体(サイズ・群れ)だけを確実に捕れるように
- 錯誤捕獲・無駄捕りを極小化(獣種違い・
- 人・獣・環境へのリスクが低い
- 再現性があり、属人化しない
これはあくまで私の個人的な意見ではあるが、この4点を同時に満たすことではないだろうか。
そして、これも全くの個人的な意見ではあるが、設計思想的なものがあれば、
その箱罠を使って、何を成したいのかがクッキリするはずだ。
これまで私が失敗して来た多くの内容は、「罠の性能」にばかり目を向け、
設計思想をないがしろにしてきたせいに思う。ここが、初心と言うか、
最初期に師匠に言われてきた事でもある。
罠は、獲れる場所に「置く」のではなく、ごく自然に「使う」ようにするべきだ。
考えてみれば、絶対に獲ってやる!みたいな殺気?が滲み出ているような箱罠に
あの臆病なイノシシが近づくだろうか。箱罠を、いつも安心して餌が食べれる場所
として認識して頂いた方が、捕獲率も上がるというものだ。もちろん、そんな消極的
な運用で、獣と対峙できるか?という疑念は付きまとうだろうが、少なくとも、私は
そういった路線で運用している。
つまり、捕獲という「結果」は、イノシシの行動に伴う「必然」であり、彼ら
彼女らをつぶさに観察し、想像して「偶然の産物」とはしない事を目指す。
理想的な設置場所とは
設置場所にも注意を払いたい。箱罠は、獣道の上などには決して置かない事だ。
通り道がある日突然、巨大な金属で塞がれていたら誰だって怪しいと感じるはずだ。
足跡が多い、良く通るから、はあくまでイノシシの移動という行動であり、餌を
食べる場所ではない。
理想としては、イノシシが減速して、つまり歩みを止め、鼻先で警戒するのではなく、
餌を探す行動を促すような場所だ。イノシシの鼻は非常に優れており、犬と同等以上の
性能があると言われている。鼻先で地面近くを探りながら、餌を探している行動は映像
などで見た事がある人も居るのではないだろうか。
もちろん、餌しか探していない訳では無く、そういった捕食行動中も警戒は常に
最大限しており、僅かな物音や匂いでその場所が安全か、否かを判別しているはずだ。
野生動物全般に言えるのは、金属の匂いにはとてつもなく敏感で、そもそも金属が
自然界に広く分布していないことがその由来だろう。吸血鬼が銀を嫌うという伝説も、
あながち的外れではないという事かも知れない。ただ、吸血鬼が野生なのかは判らないが。
ここでいう、金属が広く分布していないとは、精錬された金属の事であり、珍しい
匂いに分類されるはずなので、あえてそう書いた。
この考えには確信があり、私が箱罠を設置してから数か月は、箱罠に近づく事さえ
無かった。これはトレイルカメラ(赤外線カメラ)で確認しているので、間違いないだろう。
これは師匠にも予言されていて、暫くは寄りもせんから気長に待てと言われた。そこで、
私は箱罠に現地の土を塗ってみることにした。自然と同化させるためだ。
ところが、その土を掘りだした周辺を今度は警戒しだし、肝心の箱罠へはなかなか
寄り付かない。悶々としながら、半年を過ぎたであろうぐらいから、ようやく
箱罠周辺の餌を食べるようになった。
ちなみに私の箱罠を仕掛けている場所は、言わば交差点のような場所である。
ヌタ場、寝屋、水飲み場、餌場へ行くための交差点で平地、という感じの場所である。
さらに、乳母のゆりかごと師匠が言ったように、この場所は子育てに適した場所らしく、
メスのイノシシが多い。ただ、箱罠にかかるイノシシ自体が、メスの方が多いように
考えられ、私の場合は8割がたがメスだ。特に年が明けると、交尾して子育ての準備に
入るであろうメスは、行動範囲が狭くなるだろう。
前稿で、トリガーの発動について述べたが、私はイノシシの群れが全て箱罠に入り、
夢中で餌を食べている時に、邪魔な木の枝が出てきて、それを払おうと鼻先で持ち上げた
際にトリガーが発動する様にしている。木の太さは、5cm程度で、長さは40cm程度。
絶妙に邪魔になり、かつ普段から、トリガーを仕掛けていない時から常にその邪魔な木の棒
が出てくるようにしているので、鼻先で持ち上げる際の警戒心は全くない。むしろ、また
邪魔な木があるやん、的に、えいっ!とやった瞬間に、扉が閉まる様にしている。
この方法に落ち着くまで、何度も失敗した。群れを一網打尽しようと意気込み過ぎて、
トリガーの発動が早すぎたり、今度は遅すぎて完食され帰宅されてしまうなど、何度も
何度も失敗した。程よい加減、ある程度の狙った通りの結果が得られるまで、3年は
費やしただろうか。
餌について、書こうと思い立ち本稿を進めてきたが、結果到達せずに終わりそうだ。
次稿は必ず餌について記述したい。
