凄い・・・!!

 包丁を、意のままに、自分の思い通りに動かす。

 この実現にどれだけの時間を費やしてきた事だろう。

 

 上記の写真は、トウガラシと呼ばれる牛の肩肉で、真ん中にスジが

入っており、これに沿って分割するのが当社のセオリーになっている。

 この時に、柔らかい赤身肉であるトウガラシを極めて正確に、かつ

分割した面に対し、包丁の切っ先等の傷が入らぬようにする事が至極難しい。

この難題を

「いや、そんなん簡単に出来るよ~♪~(´ε` )」

的にやり遂げたい、というのが以前からの私の願望だった。

これまで幾度となく挑戦しては、理想の形に仕上げる事が

出来ず近年はすっかり忘れていたのだが、つい先日にとある

知り合いから

「なんか、肉職人の必殺技みたいなんってありますか?」

と聞かれトウガラシの筋引き目標を思い出す事に。

「あるある!必殺技、やってみよか!」

という事で、早速取り掛かってみた訳である。

 難易度の高い筋引き、肉磨きは他にも多々あるが、トウガラシの正確な

分割はその内の1つであると私は考えている。

 フケを外し、表面を磨き終えた私はいよいよ核心部へ。

 先ずはスジの頭、最も太い厚みのある場所を探り出し、丁寧に

露出させていく。この時、スジの繊維方向に必ず沿いながら、かつ

切っ先の角度もしっかりと合わせる。

 スジの上下にある肉の密度、硬度がある程度あるトウガラシの場合は、

包丁切っ先のスジに対する押し具合に関して、そこまで敏感にならずとも

良いが、これが仮にヘレやマルカワなどの柔らかい部位だった場合は、

その圧で変形、包丁が通った軌跡が残るので、そのつもりで行うと良い。

 次に肉をスジに沿って切り分けていく。

 慎重に、かつ大胆に。

 昔、師匠に筋引きや捌きを行う際、最も大切な事は何か?

と叩き込まれた事を思い出す。

 肉を美しく磨く際に、最も大切な事の1つ。

 それは、包丁を大きく動かす事。

 ストロークを大きく、という意味で、だ。

 丁寧にしなければと、包丁を小さく使えばそれはミシン目の様に

肉に残る事となり、美しく仕上げる事は出来ない。

 また小さい動きは仕事の進捗に関わり、良い肉磨きと言うものは

速く、かつ美しく、である。生鮮食品たる肉は、出来る限り

早く冷蔵庫になおさなければならないのだ。

 と、こんな事を口酸っぱく言われてきた。

 聞いていた当時は、

速くしたら雑になるやん。。。

 なんて思っていたのだが、ようやく今になって意味がしっかり

解るようになってきた。

 

 技術と道具が、成熟した職人と正しく組み合わされば、結果は自ずと出る。

 心技体、とはよく言ったものだと関心する。

 全てが揃う事でようやくたどり着ける境地。

 と、私が書いてはいるがそこに住んでいるとは思っていない。

あくまでその入り口をノックした、程度かと思う。

(それでも高慢だとは思うが(笑))

 次回は技術解説を重点的に行う☝

 

 

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