2025年4月、第三回ジャパニーズ和牛ワールドオークションが開催された。

 今回も前夜祭、オークション当日と関わらせて頂き、多くの経験を得る事が

出来た。内容については別の記事で紹介しようと思っているが、今回はお肉屋さん

の職人である私から見た、ジャパニーズ和牛ワールドオークションの持つ意義に

ついてお話ししようと思う。

輸出の拡大

 一番大きな目的は「輸出の拡大」にあると思う。和牛を輸出する事は消費の拡大

に繋がり、それが国内産業の礎となる。日本独自の資源である和牛※1を海外に向け

PRし、輸出すると同時に「和牛体験を日本でしてみたい!」と消費した各国の人に

思って頂ければ、それは日本に訪れるきっかけとなり外貨の獲得に繋がる。生産から

流通にまで幅広く効果が期待出来る産業と言えるだろう。

国内需要との相関

 現在の日本国内では、輸出と国内需要の関係は切っても切れない関係となっている。

それは求められる和牛の部位が異なるからだ。海外での需要は主にヘレやロースなどの

高級部位が求められており、簡単に言い表すと高級部位は高い値段で輸出して、残った

部位が国内で消費されていると言えよう。

 ロースやヘレ肉を日本国内で流通している値段よりも高価に販売することで、日本

国内に残った部位の原価が下がり、流通しやすくなるという仕組みだ。この恩恵は

国内事業者を通じて、消費者へ届けられる事となる。

 この仕組みが現在では相当浸透していて、余り輸出が過ぎると国内に残る部位が

過剰となる問題が出てきており、この解決に高級部位だけではない輸出戦略が求め

られてくるようになっている。

 この国内在庫問題は、お肉屋さんとしては複雑な心境だ。

 高級部位が輸出により先行して消費され、残った部位は国内の事業者で分け合う。

日本独自の資源である和牛が、海外の需要に左右されてしまうとは何とも国力の

低下を感じる。ただその海外需要が無ければ我々の欲する価格での和牛肉調達が

円滑に行えなくなり、それは消費の低迷を招く事に繋がるだろう。

 「どうしても欲しいなら、売ってやるぜ?」

ぐらい強気な感じで、

「和牛欲しいっす!!!」

「何とかお願いしやす!!」

みたいなやり取りで販売出来る日は

来ないんだろなぁ、と思うし

日本独自の産品が国内だけでうまく完結出来ない様に、

この産業に身を置くものとして一抹の不安と、確かな誇りがあると

確認したところである。

 さて、このような状況の中で、私の様な者が勤めるお肉屋さんが

どのように変化して、進化していくかの鍵の1つは、海外需要の中にあると

あると私は睨んでいる。

 日本ではスライス肉を扱う技術と文化があり、これは海外にはない日本独自の

特徴だ。これが存在する事が和牛を扱える原動力になっている。この、日本には

あって海外には無い、と言う部分を埋めたり、海外の方が和牛を扱う際に困っている

事を解決したり、更には日本の肉文化を広めたりする辺りにビジネスチャンスがある

様に感じている。次回からは、この辺りのお話しと実際の会場でどんなことが起きていた

のかを紹介しようと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です