ラムイチとは

 今回はラムイチのスペック加工について記述する。

 まずはラムイチとは、どんな部位なのか。

 ラムイチとは、牛のモモ肉の一部でいわゆる

臀部(つまりお尻)に位置する部位である。

 このラムイチは、

・ラム

・イチボ

の2つで構成されており、ラムにおいては通常の捌きの場合、

枝肉の段階でサーロインと分離され、この工程は”ヘレ下げ”と称されている。

 ヘレ下げを施して、モモ肉の大分割が済ん後に脱骨を行い、4つの部位に

切り出す。この時、ソトヒラとラムイチはイチボ部分で繋がっており、これを

任意の場所で分割しラムイチとなる。このソトヒラとラムイチを分割する場所

は、各メーカーで自社の販売具合や、評価額に従い決定されている。

 ラムイチは通常、モモ肉の中では最も高い評価を受けている。これはモモ肉

の中で最も柔らかい事に起因すると思われる。また、ラムイチを分割して産出

される

ラム

は上質な赤身で、ステーキ屋や焼肉屋では、ラムを更に分割し、

・ラム芯

・ラム

として評価を分け、ラム芯には付加価値を付けている場合が多い。

 この分割により産出されたラム芯及びラムは、大腿骨の付け根側が

繊維質が粗く、サーロイン側に向かうに従いキメが細かくなる。

分割されたラム
ラム芯と分割後のラム 写真右側が繊維の粗い部分
ラムと分離後のラム芯

 ラムの上には、通常、”ネクタイ”と呼ばれている部位が付いている。

 このネクタイの下には、太い筋がありこのスジも大腿骨に近づく

につれ太くなる。薄切りにする場合は、ある程度までは気にしなくとも

良いかと思われるが、焼肉やステーキで提供する場合は、このネクタイ

はラムから分離した方が好ましい。

 分離する際、接着度合いが高いので、柔らかい肉質に気を使いながら、

繊維方向と引き上げる角度をしっかりと意識下でコントロールする。

 ネクタイは厚みのない部位になるが、全体の1/3(写真左側より)までは柔らかい。

繊維方向に削ぎ切りすれば、十分に商品化出来る部位となる。

 イチボは、ソトヒラ(ソトモモ)との分割場所から、サーロイン側に向かうに

従い柔らかくなる部位。モモ肉の中ではヒウチに次いで、サシの入る部位でもある。

イチボの全体像

 上記写真の左側がソトヒラとの分割面。そこから1/3程度が硬く、繊維方向が違う。

その場所を過ぎると、柔らかくかつサシの入った場所となり、ステーキなどに向く。

硬い部分はローストビーフ等に加工し薄切りで提供、或いはシャブシャブに加工しても

良い。厚みの調整で繊維質の壁を超える事が出来る。味自体は濃く、良い。

 イチボの柔らかい部分は、写真中央側に沿って扇形に繊維が走る。この繊維方向を

しっかり見極め、カットすれば最高峰のモモ肉とて提供する事が出来るだろう。

 これらの主要部位に加え、いくつかの付帯する部位が産出される。

これらの適切な製品化も、収益面で役立ち、かつ余すことなく扱えるノウハウを

集積する事が出来る。

 初めにまず、俗にコウモリと業界内で呼ばれている部位について。

コウモリと呼ばれている部分

 コウモリは繊維に沿ってスジが入り組んでいる。それらのスジに丁寧に包丁

を沿わせて、赤身を切り出す。途中、大きなスジが出てくるのでその筋に沿って

切り出すと写真で1番右側にある肉を切り出す事が出来る。この場所がコウモリの中で

最も厚みがあり、かつ柔らかい部分となる。

 それ以外はそぎ切りにしてタレ漬けに加工したり、切り落とし材として

扱う事業者が主だろうか。

 そういえば、うちで働く従業員が昔、

「えっ?コウモリって・・・((((;゚Д゚))))」

 という、まさかの勘違いをしたのであるが、

(当店は黒毛和牛専門店である)

紛らわしい名前が付く部位が結構ある。

ムカデ(肩肉の一部)

とか

トンビ(前脚の一部)

などは、そういった類を連想させれる名前である事は確かだ。

 繰り返すが、当店は黒毛和牛専門店である。

そのような肉の扱いは、無い。

 さて、次はランボソについて。

 ランボソとは、尾骶骨の内側にある肉で、ラムについている細い肉、から

ランボソと呼ばれているかと思われる。

 このランボソは、サーロインと接していて、銀筋の一部も共有されている。

 この場所は脂が多く、かつスジが入り組んでいるのでスジ肉に供したり、

コロッケなどの原料肉とするのが通例だろう。

 うらいではバラバラに分解し、焼肉などに使う様にしている。

 仕事、磨きの技術で付加価値を付け、他社と差異化するのが狙いだ。

ランボソ

 差別化

 では無く、敢えて

 差異化

 としたのには理由がある。

 差別化、とは

価格や品質で、比較対象と区別する行動の事であるのに対し、

差異化は端から比べる事をせずに、独自の取組を突き進む

行動となる。

 まあ、それでも消費者に比べられる事になるかもしれないが、

販売する側、最初の設定者が

「この製品はよそで100円、うちでは90円だよ!」

なんて事を続けていれば、比べる側、比べられる側、共に疲弊してしまう。

 それに、価格を比較して勝てるなんて事が出来るのは、大手さんの

物量に物をいわせて行うやり方。デベロッパーでは無い、うらいにそんな

方法は無理筋。そりゃ商売の基本は

【安く仕入れて高く売る】

でしょうが、そればかりで商売を続ける事は中小企業に負担が大きすぎる。

 それに

よそに無い品ぞろえ

うらいでしか手に入らない

を、技術で生み出せるのであれば、こんなに面白い事も無い。

 そういう背景から、私たちはそうした仕事を心掛けているのだ。

 そして、忘れてはいけないスジ。

 スジにも、大きいや小さい、太いや薄い、固い、柔らかいなど

算出される場所の違いでかなりの差があり、この取り扱い方も

重要な要素となる。

 また、スジに関しては職人の技術が最も見えやすい場所で、

スジに如何に肉を付けずに磨くか、は肉職人における永遠の

テーマと言って過言ではないだろう。

太く、長い筋
並品質のスジ
固い 小さいなどのスジ

 上記3枚のスジに、敢えて重量が見えるように撮影したのには訳がある。

 どれだけ良い筋が取れるか、は職人の腕次第。

 因みに、ラムイチの元情報は

重量:8.6kg

性別:雌

月齢:31か月齢

産地:宮崎県産

 である。参考になれば。

 最後は、磨き後に出てきた脂の量。

ラムの脂

 以上、ラムイチのスペックに関する記事でした。

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