世界が和牛を競う夜

2026年4月3日。

姫路に、世界が集まる夜がある。

ジャパニーズ和牛ワールドオークション——

翌日に控えたオークション本番に向けて、世界各国のバイヤーが一堂に

会する前夜祭が、ホテル日航姫路で執り行われた。

私がフードディレクションと調理を担当するようになって、今年で4年目を迎えた。

このイベントの規模感を、少し説明させてほしい。

参加するのは、アジア・欧米・北米など各国から招聘された、

和牛の大口バイヤーたちだ。それぞれの国で、確かな基盤を

築いている、云わばプロ集団。

彼らは、自分達の国で、どのように

和牛ビジネスを展開していくべきかを知っている。

勤勉で、優秀であり、生半可なモノでは納得しない。

彼らをもてなす事、それはすなわち世界の最先端

と接している。

翌日のオークションでは、和牛マスターで

選びに選び抜かれた、選りすぐりの黒毛和牛が競り落とされ、

その枝肉は世界各地の高級レストランや食肉市場へと渡っていく。

国内のBtoBイベントとして、この規模と格式を持つものは、業界の中でも他に類を見ない。

そういったイベントが、ジャパニーズ和牛ワールドオークションなのだ。

このジャパニーズ和牛ワールドオークション前夜祭の役割は、単なる歓迎の

食事会では留まらない。

バイヤーたちは翌日、巨額の判断を下す。

事実、すでに初年度で、日本の優秀なバイヤーが競り負けている。

資金力・決断力・展開力に優れていて、大胆に、かつ楽しみながら

オークションへ参加する。例え年に1度のイベントであれ、これだけの

情熱が注がれたオークション(競市)を体験する事は殆ど無い。

その情熱、その判断の質を更に高めるために、前夜に「食べる体験」

を設計することが、私の仕事の核心だと考えている。どの部位を、

どう調理し、どの順序で、

どのタイミングで提供するか——

それは単なる献立ではなく、翌日の入札行動に影響を与えることを意識した、

戦略的な食の設計になっている。

こういえば格好が良いかもしれないが、要は儲けに繋がるかどうか、だ。

4年間、この場所に立ち続けてきた。

初年度には見えなかったものが、今年は見えている。

どの国のバイヤーがどの部位に反応するか、場の温度がどう変化するか、

どの瞬間に会話が深まるか——

数値化できないが、確実に積み重なってきた判断の精度がある。

今年も、あの舞台に立てた。


次回は、前夜祭で実施したステーキ食べ比べ企画と、

わさびゼリーという小さな発明について書こうと思う。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です