分業の進んだ現在の業界で、今も続けている理由とは。

和牛うらいでは、

        美味しいお肉を通じて、関わってくださった方を幸せにする

というスローガンを掲げている。その為に店長の私は、常に意識している事がある。

それが、今も捌きを続けている理由になっている。

 美味しいお肉とは、なんとも抽象的で主観的だが、まずは自社の人間が

食べて最低限、「これは美味しいな!」と言える肉でなくてはならない。

自分が自信を持って、人に勧めるにはこれが出発地点だ。

食べた事が無いなんてのは論外だが、自分が実際に食べてみて、

美味しいとは思えない状態で「これ、美味しいんで買って下さい♥」

なんて私は到底言えないので。

 更に!

 美味しいは、出来る限り多くの人に言って頂きたい。

美味しいの定義は人それぞれ好みの部分も大きく、独りよがり

になってもいけない。出来る限り多くの方に、美味しさへの賛同を得る

という事についても留意しなければいけない。

それが、商売の繁盛に繋がるはずだ。

 そういった、基本的な考え方、捉え方を念頭におき、ではそうやって

それを実現していくのか、という方法を考え実践していく事も大事だ。

それが分業の進んだ現在の業界でも、敢えて手間のかかる捌きを行って

いる理由となっている。

1頭買い付けの利点

 美味しい!

 そのお言葉を頂くための取り組みの1つとして、和牛うらいでは

1頭仕入れを重視している。

 さて、1頭買い付けると、果たしてどのぐらいのお肉

が一度に出来るのだろうか。

 1頭から、骨とある程度の脂を取り除くと、およそ7割となる。

1頭の大きさは、牛により様々だが、和牛うらいが仕入れる平均サイズ、

420kg程度の場合だと300kgぐらいのお肉が出来上がる。

仮に、その全てを焼肉に供したとすると、その数なんと

4000人前以上!!(1人前を焼肉店の平均値、70gとした場合)

 と、1頭買いは一度に大量のお肉が手に入る優れた手段だ。

 今のお肉屋さん業界の仕入れ事情は、この1頭仕入れと

各部位別の単品仕入れと呼ばれる2つに大分されている。

単品仕入れは好きな部位を仕入れる事が出来る反面、

残りの部位のリスクを仕入れ先に残すことになるので

定期的に自分達が望む品質の肉を仕入れる事は難しい。

 人気のある部位、使い勝手の良い部位、季節により変わる需給。

これが輸出も行っている現在だと、国内マーケットのみならず

海外のマーケットにも影響されてくる。こうなると、貴方が欲しい

部位は、他の誰かも欲しているはずで、そこに価値が生まれ価格も

上がってくる。

 そこで、自分達の思い通りで、かつ安定的に良い品質の肉が手に

入る1頭買い付けが有効な手段となる。

 ここで、なぜ、うらいでは今も牛の捌きをやっているのか

に戻ると、理由は沢山あるんだけど、お客様から「今日も美味しかったよ!」

と言って頂きたくて捌きを行っている。では、その具体的な理由とは

何かというと、肉の品質コントロールである。

 屠畜といって、牛から肉になる瞬間、この屠畜から

肉がスタートする。次の工程は骨を取り除く事になるが、

この骨を、何時、どのように取り除くかが、美味しいに

とても関わってくる。

 そして、骨を取り除き、肉を磨く工程を良いタイミングで行う

事は、その後の肉に大きな差が生まれてくる。ここを思い通りに

コントロール出来ない、或いは知らないのは一人前の職人とは呼べないし、

仕入れ業務を担当しているならば、必須で見に着けたい技術だ。

 肉の熟成における要素は多岐に渉り、とてもこの回だけで

語り尽くす事は出来ないが、大きな要素の1つに死後硬直がある。

死後硬直の詳しい仕組みは、ここでの説明はしないが端的に説明すると

硬直した筋肉が時間と共に解凍していく現象だ。

 この時を見極め、自社の理想とする時期にそれぞれの行程を施す

事が、自社の理念実現に不可欠だという事で、うらいは骨を捌く。

業界用語では、「抜く(ぬく)」「捌く(さばく)」「捌き(さばき)」

というが、全ての骨を高精度に、かつ素早く抜けるのも一人前の

職人に必要とされる技術だと私は感じている。

 時代の流れに逆行する形となっているが、その取り組みが個性と

なり、お店の特徴になるのだ。

 ところで、実はこの取り組み、30年ほど前までの業界では実に当たり前で、

どのお肉屋さんも普通に行っていた。それが今では加古川市内のお肉屋さんで、

純粋な小売業者となると、恐らく私たちしか行っていない。

 育つまでに時間のかかる取り組みになるが、これからも美味しいお肉を

提供していく為に、私たちは骨を抜き続けるだろう。

 次回以降は、その他の理由も説明したいと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です